経験者インタビュー

育休中に取り組んだプロボノ活動は
暮らす町の地域団体との出会いに
子育ては価値あるキャリアと実感!

河村かおるさん
メーカー勤務(人財開発)
PROFILE
保育園待機中にプロボノ活動を始めることを決意し、GRANTに登録した河村さん。参加したのは、自分が暮らす市で活動する団体のプロジェクトでした。参加までの経緯やプロジェクトの詳細について伺いました。
※河村さんのGRANT参加実績はこちらからご覧いただけます。
保育園の入所待機期間、相談相手はAI
企業で人財開発の仕事をしています。ファーストキャリアは営業で、転職してこの分野に進みました。人事的な視点から、業務プロセスやビジネスプロセスを変えるような人財開発、組織開発に興味を持って取り組んでいます。

今回のプロボノ活動に参加したのは第二子の育児休業中です。生後4か月頃から復職に向けて動き出し、7月入園を希望して保育園に申し込みましたが、残念ながら定員がいっぱいで待機となってしまいました。そこで、空いた時間を活かして何かできることを考えプロボノにつながりました。

プロボノを始めるにあたって相談したのは、対話型のAIサービス「ChatGPT」です。「育休中は給付金を受ける立場なので、無償でプロボノ活動をしたい」と尋ねたところ、いくつかのサービスの紹介があり、その中の一つが「GRANT」でした。
職場復帰のためのウォーミングアップ
プロボノは初めての経験でした。過去にボランティア活動に参加したこともありません。以前、アメリカでは大学時代にボランティア活動をするのが当たり前で、社会貢献や社会参画に積極的という記事を目にしたことがあったり、知り合いがプロボノをやっていたという話を聞いたりしていたのを思い出し、育休中の日中の時間を使って私もやってみようと思い立ちました。

プロボノへの参加は、仕事につながる経験ができる、さらには職場のタスクや人間関係を離れて私個人として新しいことに挑戦できるという感覚がありました。先の見通しが分からない「保育園待機」という状況を前向きに捉えて、育休期間でしかできないことをしたいとも思っていました。地域活動団体と触れ合うのも今回が初めての経験でした。
「気になる」登録後のオファーメールがエントリーのきっかけに
ChatGPTのおすすめを参考にしながら、いくつかのマッチングサービスでプロジェクトを探しました。自分のリソースを注ぐには、当事者意識を持てることが大切だと考えていて、今回取り組んだ千葉県船橋市の子育て支援団体のプロジェクトには、まさにその感覚がありました。タイミングや内容が合っていたことに加え、同じ船橋市で暮らす自分の町の団体を支援できることに強く縁を感じたのです。身近な地域で活動する団体にはどんな人がいるのだろうと興味も湧きました。

さっそくプロジェクトに「気になる」登録(ブックマーク機能)はしたものの、参加については迷っていました。そんな時、団体さんから「ぜひ河村さんにお願いしたい」というオファーメールが届き、「団体さんがそう思ってくださっているのならぜひ」と思いエントリーしました。相手からも魅力を感じてもらえているとわかったことで、気持ちが楽になり安心して参加することができました。

コロナ禍以降はテレワーク中心の働き方をしていましたので、オンラインでプロジェクトを進めることには慣れていましたし大きな不安はありませんでした。どのような出会いがあるか、本当に楽しみというのが率直な気持ちでした。
子育て応援イベントのチラシ作成のプロジェクト
プロジェクトの内容は、毎年開催されている子育て応援イベントの告知チラシ作成でした(子育て応援メッセinふなばし実行委員会「イベント告知のチラシ作成」)。

支援募集記事:イベント告知のチラシ作成


団体からの依頼は、「イベントには多くのプログラムがあります。その魅力を伝えるために情報整理をしてチラシを作成してほしいです」という内容で、期間が約1ヶ月の短期のプロジェクトでした。

進めるにあたっては、単にチラシを作るのではなく、この事業のゴールや目標、課題を改めて整理してみたいと考えました。打ち合わせでは、そうした視点も共有しながら話し合ったのですが、その過程で「これまで漠然と事業に取り組んでいたことに気付いた」といった声をいただき、事業のコンセプトや魅力を第3者の目線で言語化することに私が関わる価値があるんだ、と改めて感じました。
具体的には、第三者の立場として「このイベントで最終的に何を達成したいですか」「どういう状態を達成したらこのチラシ作成は大成功になりますか?」等の問いかけをしながらご意見を伺っていきました。すると、実は「参加者の来場人数が減っている」ことや、「来場者の滞在時間を長くしたい」という課題が浮上してきました。

これらの課題を明確化した上で整理の過程をご一緒しました。打ち合わせで聞きたいことを前もって準備し、終わった後にメールやチャット等でやり取り、次のミーティングまでにその回答を踏まえてたたき台を作成という流れで進めました。船橋市のために長年取り組んでいらっしゃる団体の皆様の想いをしっかり伝えることで、チラシを手に取った人が「自分のためのイベントなんだ」と安心感をもち、イベント主旨に深く共感した上で来てもらえるようなストーリーにまとめることを目指しました。

このアプローチは普段の仕事でも意識しています。人財開発の仕事では、例えば社員向けの研修は、HOW(どうやって)を考えることから始めることが多いです。しかし、「ビジネスをどう変えたいのか」「現場でどんな課題が起きているのか」というところが整理できていないと、研修をやっても変化しなかったということになりがちです。こういったポイントは常に意識していますし、今回にもつながる内容と思いました。
2つの課題解決のために工夫したこと
チラシ作成にあたっては、営業職時代に提案書やセミナーのチラシを扱ってきた経験を活かし、開催日や概要が整理されて分かりやすく伝えられるように工夫しました。
特に、実行委員会の方々の人柄や思いがイベントの大きな魅力だと感じましたので、それが伝わるような内容を盛り込みました。また、20数年続いていることは大きな強みと考え、これまでに参加した方の声を反映させたいと考えました。参加者の声を入れた点が特に大きく変わった点だと思います。


成果物(イベント告知のチラシ)


「参加者減少」と「滞在時間減少」という2点の課題については、その理由について、私の母親目線・ユーザ目線での仮説と、団体さんの肌感覚を言語化していくとかなり明確になってきました。

そこで、「滞在時間をゆっくりしていただけるように、来場者に刺さるようなコンセプトでメッセージを伝える」「一日の過ごし方が想像できるよう情報を分かりやすく伝える」というところに重点を置くことにしました。

この狙いは団体の方に伝え、メインのメッセージは私が作成するのではなく、“子育て中の母親”目線で魅力的に感じる部分のアドバイスはしながらも、団体さんの側で準備いただくように依頼しました。団体さんにとっても、実行委員会内で議論を重ねながら、改めて自分たちの想いを表現いただく機会になったと感じています。
結果的に「地域みんなで子育てを応援しよう」というおもてなしの思いや、「お待ちしています」というメッセージなど、人間的な温かみを感じられるものになりました。

あわせて、これまでの参加者の声から、「たくさんのコーナーを回れました」「色々な人と関わる機会になりました」といったコンセプトにマッチした声をピックアップし、イベントのイメージを明確に持っていただけるようアンケートの声を引用しました。

展示イベントに関しては、何をするのかが見えやすくなるように工夫しました。ディズニーランドに行く時みたいに、「次はあそこへ行って、こうやって回って」と、行きたいところがたくさんあってワクワクする、という気持ちで選んでもらえるように、限られた紙面の中でそれぞれのプログラムの詳細がわかるようにしました。

イベントは10時にスタートし、終了は15時です。過去には一日中滞在された方もいらっしゃったという話もお聞きしました。そこで、「一日のんびり過ごしてもいいんだ」「施設内でお昼ご飯も食べていいんだ」と感じていただけるよう、お弁当を食べる場所などの準備が整っていることを案内に加えました。

「子育て応援メッセ2025inふなばし」は2025年は10月19日(日)の開催です。私も来年に向けた気づきなどを伝えられるかもしれないと思い、顧客として参加する予定です。オンラインで協働してきた団体の皆様と、リアルでお会いできるのも楽しみにしています。
子育ては価値あるキャリア
プロジェクトを通じて、目的やゴール、課題を、顧客(ユーザ)である“子育て中の母親“の目線を交えて深く考えたことが団体さんにとって一番喜ばれるポイントになったのは良い経験でした。そういったことが明確でないまま、作業として依頼を受けるのではなく、さらに上位の目的、つまり「何のために、どうなったら成功なのか」「顧客(ユーザ)にとって本当に大事なことは何か」を明らかにすることの重要性を改めて実感しました。

また、今回のこの経験を通じてもう一つ実感したのは、子育てという経験自体が価値のあるキャリアになるということです。今回は団体からオファーをいただいたこともあり、船橋市のママ代表として提案しようという思いで取り組みました。団体さんも大変喜んでくださいましたし、「当事者のママの声を反映してチラシ作成ができたことが価値です」というフィードバックもいただきました。船橋市で母親として子育てをしてきた歩みそのものが、体験を具体的に語れる価値を生み出しているのだと気づきました。

この2か月を通じて、ビジネスと自分の人生をつなぐこと自体が自分らしい価値創造の力になることにも気づき、外に出て活動したことで自分自身の強みを再認識する機会となりました。
地域活動、社会貢献を考えるきっかけに
地域には本当に多様な活動団体があることを改めて実感しました。団体でボランティアとして関わる方々の熱量や純粋な思いには強く心を動かされ、応援したいという気持ちが自然に湧きました。自分の持っている思いを社会に繋げていくということを体現されている方々は、無報酬でも、何か動機があってやっていると感じました。

プロジェクト自体も思ったよりもスムーズに進み、団体の方々とフラットにディスカッションを深められたと感じています。会社の看板を離れても、自分が貢献できる領域を見つけられたことで、地域活動への意識も高まりました。

仕事の中で「社会課題の解決に取り組む」と言っても、スケールが大きすぎて具体的に何ができるのか見えにくい。けれども、「社会課題解決の一つとしてこんなプロジェクトがあります」と示されると、自分の取り組みが社会貢献につながっていると実感できる。そこがプロボノの良さだと改めて感じました。実際に、子育て、仕事、プロジェクト、全てが今後の人生で一つに繋がっていくのではないかと感じています。一つ一つの経験を余すところなく他のところにも活かしていきたいと思っているところです。
改善点よりも強みをお伝えすることを心がけました
プロジェクトを振り返ると、先方の強みを伝えしながら提案を作っていったことはよかったと思います。20数年続いているイベントで、過去の参加者の方からのアンケートが残っていたことから、その中に資産になるようなコメントを見つけて、「これは強みです。だからちゃんと届けましょう」と形にしていきました。ともすると外部からの改善提案はダメ出しになりがちですが、改善点を指摘するよりも、「良いところをもっと前に出していきましょう」とお話しできたことが、うまく進める秘訣だったと感じています。

オンラインでの協働でしたので、最初はお互いが打ち解けたり、信頼関係を築いたりする時間もあまりないまま本題に入っていく形でしたが、強みをお伝えしたあたりから場の雰囲気もやわらぎ、ミーティングでも話しやすくなりました。私自身もリラックスできましたし、先方も耳を傾けてくださったと感じます。

プロジェクトは上の子が保育園にいる時間を使って進めていきました。下の子がお昼寝の時間は集中してチラシの作成や情報整理を行いました。生活のあらゆる時間を使って考えを巡らせつつ、必要なときに資料へまとめて整理しました。第二子の育休だったこともあって経験から子育ての手の抜き所もわかり(笑)、子育てとプロジェクトの両立もうまくできました。
好奇心こそが出会い、縁を感じたら参加!
GRANTは、参加者登録をするだけで、全国のスキルを必要としている団体のプロジェクトにアクセスできる手軽さが魅力です。私もそんなに手間をかけていません。プロフィールは、AIに相談しながら分かりやすさを優先して1時間くらいかけて作成・登録し、あとは子どもの世話をしながら隙間時間でスマホを見て、興味あるプロジェクトを「気になる」登録する形で利用していました。

参加しなくても「こんなプロジェクトがある」と知るだけでもすごく刺激になりますし、「どんなプロジェクトだったら参加して貢献したいと思える?」と自分に確認しながら眺めることも有意義だったのではないかと思っています。その体験は復職後も人財開発の業務に活かせそうです。

自分が関わってみたいという好奇心が動いたプロジェクトが見つかったら、それ自体が出会いです。飛び込んでみることはすごく大事だと改めて感じます。なんとなく眺めて、興味を持ったら参加してみたら良いと思います。
当事者として「力になりたい」と思えたこと自体がアンテナに引っかかっているということです。「気になる」登録をしたら、オファーも来るかもしれません。私は縁に乗って参加しました。少しでも縁を感じたら参加してみるのが良いと思います。


※掲載内容は2025年8月取材時点のものです。
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